2003年3号
平成14年度「NPO/NGOと政府・企業のコラボレーション」 研究委員会報告書 NPO評価−協働のための組織評価を中心に-
この度、標題の研究委員会報告書が完成したので、その概略を以下に紹介する。
報告書要約(山内委員長による「まとめと提言」より抜粋)
NPOの社会的役割が増大するに伴い、NPOの組織・活動を評価する必要性は高まり、事業評価,組織評価、或いは企業による社会貢献プログラムの評価など各種の評価手法開発が進みつつある。
評価は観点、方法などにより様々のバリエーションがある。
事業評価は、NPOが実施する個々の事業を対象とし、主に事業のアウトカム(事業実施による副次的効果も含めた社会的インパクト)に関する評価を行う。事業の費用対効果をみることも、目的や計画を再点検する上で重要である。
NPO自身が行う自己評価と第三者が行う外部評価があり、事業の実施者、受益者を含めた参加型評価の重要性が増している。
また、企業の社会貢献活動プログラムやNPOとの協働プログラムを自己評価する活動も一部の先進的な企業で始まっている。
組織評価は、評価を通じ、組織の改善が進むか否かが重要である。自己評価ツールとして様々な手法が開発されている。米国では、理事会による組織の自己評価パッケージが利用されている。日本では、「評価みえ」が組織の自己評価ツールを開発・運用している。また、バランス・スコアカードがNPO組織の自己評価システムとして普及しつつある。
第三者評価では、ろうきんがNPOを融資の対象として評価している。フィリピンでは、NPO自身がNPOへの免税資格付与判断のための組織評価を行っている。
米国では、個別NPOの活動をデータベース化して提供する検索サイトやNPOを評価するNPOが登場している。アメリカの代表的な検索サイトの一つ「ガイド・スター」にアクセスすると、全米の寄付控除適格NPO、約百万団体の活動内容や財務データを見ることができる。
企業の社会貢献活動は、戦略的社会投資としてステークホルダーに対する価値、プロセスの効率性と費用対効果を測定評価することが求められ、いくつかの先進的な企業では、社会貢献プログラムを評価する仕組みを構築、活用している。バランス・スコアカードは、こうした企業の社会貢献評価に際しても有用なツールと考えられる。
日本では、NPO活動の評価の必要性が認識され始めた段階であり、評価手法の開発や実際の普及・適用がこれから本格化する。今後、NPO評価を定着させ、有効に機能させるための主要な課題に対し、以下を提案する。
(1) |
評価目的の明確化とフィードバック:自己評価は、改善課題認識が目的であり、評価結果は、事業判断、組織運営に反映されるべきである。第三者評価では、評価に先立ち、NPOとの間に組織運営,事業運営に関する認識の共有が望まれる。 |
(2) |
NPO情報公開の促進:活動情報、基礎統計は的確なNPO評価に欠かせない。NPOの自主的な情報開示、行政による公開のガイドライン設定他支援施策が考えられる。 |
(3) |
会計システムの整備:NPO評価の基本的要素である財務会計情報の相対比較ができるよう、会計基準統一の方向性検討が必要である。 |
(4) |
評価の評価:評価には資源が必要になる。評価がNPO組織・活動を改善するなら資源投入は投資であり、費用対効果に基づき、投入すべき資源量を決定すべきである。 |
(5) |
評価手法の研究と評価専門家の育成:ODA事業評価などの先行分野から、評価手法の系統的な技術移転が望まれる。また評価専門家育成も急がれ、プログラムの充実、人材育成のための大学院の開設が期待される。 |
NPO評価手法の確立には、実践を通じた手法見直し、不断の試行錯誤とフィードバックが不可欠である。 また、評価を忌避、軽視するNPOが多いなか、評価者とNPO双方のメリットになる評価スキームが必要である。
研究委員会名簿(敬称略,五十音順)
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氏 名 |
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所属・役職(平成14年10月現在) |
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委員長 |
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山内直人 |
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大阪大学大学院国際公共政策研究科 教授 |
委 員 |
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伊吹英子 |
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野村総合研究所 経営コンサルティング1部 |
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今瀬政司 |
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NPO法人・市民活動情報センター 代表 |
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川北秀人 |
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NPO法人・人と組織と地球のための国際研究所 代表 |
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岸本幸子 |
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NPO法人・パブリックリソースセンター 事務局長 |
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粉川一郎 |
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NPO法人・コミュニティ・シンクタンク「評価みえ」代表理事 |
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小山正人 |
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近畿労働金庫 経営企画部 広報課長 |
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鈴木 均 |
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日本電気株式会社 コーポレートコミュニケーション部社会貢献部長 |
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田中浩二 |
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ITSジャパン 広報会員サービス部 部長 |
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田中弥生 |
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国際協力銀行 プロジェクト開発部 参事役 |
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中原美香 |
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NPO法人・NPOリスク・マネジメント・オフィス所長 |
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陪 席 |
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岩村公隆 |
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経済産業省 商務情報政策局サービス産業課医療・福祉機器産業室課長補佐 |
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小滝一彦 |
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経済産業省 大臣官房政策企画室企画主任 |
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川上悟史 |
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経済産業省 大臣官房政策企画室リサーチャー |
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杉田定大 |
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経済産業省 通商政策局アジア大洋州課長 |
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関口訓央 |
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経済産業省 大臣官房政策企画室企画主任補佐 |
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中野宏和 |
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経済産業省 大臣官房政策企画室企画主任補佐 |
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濱邉哲也 |
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独立行政法人 経済産業研究所 総務ディレクター |
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村山 純 |
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経済産業省 商務情報政策局サービス産業課 |
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森川正之 |
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経済産業省 大臣官房政策企画室長 |
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事務局 |
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木村耕太郎 |
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財団法人 地球産業文化研究所 専務理事 |
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照井義則 |
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財団法人 地球産業文化研究所 理事・企画研究部長 |
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竹林忠夫 |
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財団法人 地球産業文化研究所 企画研究部次長 |
報告書目次構成
本編
第I部 NPO評価の全体像
第1章 |
評価の概念整理のための一考察(田中弥生委員) |
第2章 |
NPOと組織評価(川北委員) |
第3章 |
アメリカのNPO評価をめぐるいくつかの事例(中原委員) |
第II部 NPO組織評価の手法
第4章 |
NPO評価システム開発経験に基づくNPO組織評価留意点について(粉川委員) |
第5章 |
バランス・スコアカード(BSC)によるNPO評価(伊吹委員) |
第6章 |
NPOに関する第三者評価の課題―ユナイテッドウエイにおける組織評価事例を参考に-(岸本委員) |
第7章 |
NPOの評価基準設定のための課題とデータ解析(今瀬委員) |
第8章 |
市民社会による自己決定メカニズム~フィリピンNGOによるNGOの免税認証~(田中弥生委員) |
第III部 企業とNPOの協働と評価
第9章 |
企業の社会貢献と評価について-NECの事例-(鈴木委員) |
第10章 |
企業の社会貢献と評価(田中浩二委員) |
第11章 |
NPO融資とNPOの評価:ろうきんNPO事業サポートローンにおける評価の仕組みと運用の実際(小山委員) |
まとめと提言(山内委員長)
海外調査編
欧州における非営利組織評価に関する調査
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